遺産分割協議をするために成年後見制度を使う
遺産分割をするのに相続人に判断能力が不十分な人がいるとき
相続が発生したときに、相続人の中に知的障害等で判断能力が充分でない人がいる場合は、遺産分割協議はどうしたら良いでしょうか?
例えば、夫がなくなり、相続人は妻A、子B、子Cだった場合のことを考えます。
夫には預貯金と自宅不動産がありました。
子Cが、知的障害で遺産分割協議をすることができない場合、どうしたら良いでしょうか?
この場合は、子Cに成年後見人を選任して、成年後見人に遺産分割協議に参加してもらうことが考えられます。
成年後見人は、子Cの日常生活に関する行為を除くすべての法律行為を子Cに代わって行います。
今回のように、遺産分割協議に参加したり、子Cの預貯金の管理をしたり、福祉サービスを受ける契約なども行います。
それでは、成年後見人には誰がなるのでしょうか?
特に成年後見人の候補者がいなければ、裁判所が司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家を選任します。
また、家族等でも成年後見人になれますので、今回の事案では、妻Aまたは子Bなどを後見人の候補者とすることもできます。
しかし、最終的には、家庭裁判所が事案を勘案して、専門家を後見人にした方が良いと判断すれば、家族を後見人の候補者に挙げていても、専門家を選任する場合もあります。
その他、家族が後見人になった場合でも、専門家を後見監督人に選任する場合もあります。
専門家が成年後見人に就任した場合は、妻A、子Bと成年後見人が遺産分割協議を行うことになります。
成年後見人が選ばれた場合、遺産分割協議が終了した以後も、後見人はずっと付いたままです。
遺産分割協議が終了したから、後見人の職務が終了するわけではなく、その後も、後見人は本人の財産管理や身上監護を行っていくことになります。
したがって、家族が後見人になった場合は、ずっと、後見人として財産管理や身上監護をして、定期的に(概ね年に1回)家庭裁判所に報告書を提出することになります。
また、家族が後見人になった場合、例えば、今回の事例で妻Aが後見人に就任したとします。
すると、夫の遺産分割協議は、妻Aは夫の相続人としての立場で参加しますが、子Cの後見人としての立場としても参加すると、妻Aと子Cの利益が相反することになってしまいます。
つまり、妻Aの相続の取分を多くすると、逆に子Cの取分は減るし、妻Aの取分を少なくすると子Cの取分は多くなります。
この様な場合、妻Aは子Cの後見人として遺産分割協議に参加することができなくなりますので、子Cについて特別代理人を選ぶ必要がでてきます。
特別代理人の選任は家庭裁判書に申し立てます。
特別代理人が選任されたら、妻A、子Bと特別代理人が遺産分割協議をすることになります。
なお、後見人が選任されている場合、家庭裁判所は遺産分割協議をするときは、法定相続分を下回らないように指導することがほとんどだと思います。
今回の事例で言うと、子Cの法定相続分は4分の1ですので、子Cに4分の1相当分の遺産を相続させる内容の遺産分割協議にしなさいということになります。
当事務所では、後見人選任の申立書作成、後見人への就任、特別代理人選任の申立書作成、特別代理人への就任、相続登記などを承っております。