子供がいないとき
遺言があった方が良い理由
遺言書を作らなかった場合、よく困るのが、夫婦の間に子供がいないときです。夫の両親も亡くなっており、夫に兄弟が3人いるとします。
夫がなくなると、夫の相続人は妻(相続分は4分の3)と兄弟3人(各相続分は12分の1)となります。
このとき、まず大変なのが、相続人を確定するために戸籍を集めることです。戸籍謄本は、まず、夫が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を集めますが、さらに夫の兄弟を特定するために、夫の父親と母親の戸籍謄本も生まれてから亡くなるまでの分を集める必要が出てきます。
仮に、夫の兄弟で亡くなっている人がいれば、その兄弟の子が代襲相続人となりますので、夫の兄弟の子を特定するために、夫の兄弟の戸籍謄本も生まれてから亡くなるまでの分を集めます。
このように、相続人に兄弟が入ってくると、相続のために集める戸籍謄本がかなり多くなる可能性が高いです。
次に、妻と夫の兄弟が相続人になった場合は、財産の分け方を、妻と夫の兄弟とで決めなければなりません。
遺産を妻が全部相続するとなれば、その旨を書いた遺産分割協議書に、夫の兄弟全員の実印をもらい、印鑑証明書も取ってもらわなければなりません。夫の兄弟が3人であればまだしも、もっと多かったら、連絡をして説明をするのも大変なことになります。また、夫の兄弟も亡くなっていたら、その子供が代襲相続人になりますので、さらに大変です。
それでも話がスムーズにまとまれば、まだ良い方です。兄弟の相続分は本来4分の1(兄弟の合計)ですので、法的には兄弟は、その分の遺産を要求できます。預貯金があって分配しやすいならまだしも、遺産が居宅不動産しかなかった場合、兄弟から居宅不動産の4分の1相当のお金を払ってほしいとか言われたら、非常に困ってしまいます。
そんなことに備えて、予め、妻に全財産を相続させる旨の遺言書を作っておけば、夫が亡くなったときに、遺言書を使って、スムーズに遺産を妻名義に変えることができます。夫の両親の戸籍謄本を集めたり、夫の兄弟と遺産分割協議をすることを回避することができるのです。