アイフルの期限の利益喪失の主張
アイフルは、実際の取引時に数日ほど支払日から返済が遅れた場合、その数日分だけ遅延損害金を取って、それ以降は通常利率で利息を受け取っていることが多いです。
この様な事案で、アイフルは、過払い金訴訟になると、遅れた時点で期限の利益を喪失しているのであるから、以降の利率は遅延損害金利率で計算すべきとの主張をしてくることがあります。
実際の取引時に、遅れた以降は、全て遅延損害金利率で受け取っているならまだしも、遅れが解消した後は通常利率に戻していながら、過払い金訴訟になると遅延損害金だと主張するのです。
対策としては、まず、期限の利益の喪失を否認し、アイフルに立証を求めることだと思います。
アイフルは、基本契約書すら書証として提出せずに、期限の利益の喪失を主張する場合もあるので、そうすると約定弁済日や、期限の利益を喪失する条件も不明となります。
その場合、取引履歴に遅延損害金の記載があることのみが根拠となりますが、取引履歴は取引終了後に、アイフルが作成した書類であり、遅延となる根拠も記載されていませんから、これをもって期限の利益を喪失したとは言えないはずです。
次に、期限の利益の再付与や、喪失の宥恕という主張も考えられますが、単純に一括請求せずに分割払いで受領していたという主張だけでは、期限の利益の喪失が認められてしまうかもしれませんので、注意が必要です。
期限の利益の喪失が争われた最高裁判決に、最高裁第三小法廷平成21年4月14日判決<平成19年(受)第996号>があります。
同判決は,期限の利益喪失後の弁済金を全て遅延損害金に充当した領収書を発行していた事案ですが、一括請求をしていないという理由だけでは、期限の利益の再付与、期限の利益の喪失の宥恕は認められないと判示されました。
単純に一括請求をしていないという理由だけでは、上記の判例に照らしても厳しいのではないでしょうか。
しかし、この最高裁判決は、「上告人は,上記期限の利益喪失後は,本件貸付けに係る債務の弁済を受けるたびに,受領した金員を『利息』ではなく『損害金』へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していた」,「上告人が,上記期限の利益喪失後は,被上告人に対し,上記のような,期限の利益を喪失したことを前提とする記載がされた書面を交付していたとすれば,上告人が別途同書面の記載内容とは異なる内容の請求をしていたなどとの特段の事情のない限り,上告人が同書面の記載内容と矛盾する宥恕や期限の利益の再度付与の意思表示をしたとは認められないというべきである」と判示しています。
期限の利益喪失後に、弁済金を「損害金」として受領するようなこととは異なる内容の請求をしている場合は、特段の事情があるとして、期限の利益喪失の宥恕や期限の利益の再度付与も認められるという内容となっています。
アイフルの場合は、数日の遅れた分以外は、「利息」として受領しているのであるから、上記最高裁判例における特段の事情と言えるのではないでしょうか。
また、最高裁第二小法廷平成21年9月11日判決<平成21年(受)第138号>なども参考になります。
この事案は,領収書には遅延損害金に充当する旨の記載があったが,利息と遅延損害金の利率が同じこと,貸金業者の対応により,借主が,期限の利益を喪失していないと誤信し,貸金業者も,その誤信を解くことなく,長期間,借主が経過利息と誤信して支払った金員等を受領し続けたものです。
最高裁は,「上告人は,被上告人が期限の利益を喪失していないと誤信していることを知りながら,この誤信を解くことなく,第5回目の支払期日の翌日以降約6年にわたり,被上告人が経過利息として誤信して支払った利息制限法所定の利息の制限利率を超える年29.8%の割合による金員等を受領し続けたにもかかわらず,被上告人から過払金の返還を求められるや,被上告人は第5回目の支払期日における支払が遅れたことにより既に期限の利益を喪失しており,その後に発生したのはすべて利息ではなく遅延損害金であったから,利息の制限利率ではなく遅延損害金の制限利率によって過払金の元本への充当計算をすべきであると主張するものであって,このような上告人の期限の利益喪失の主張は,誤信を招くような上告人の対応のために,期限の利益を喪失していないものと信じて支払を継続してきた被上告人の信頼を裏切るものであり,信義則に反し許されないというべきである。」と判示してます。
貸金業者の行為により、期限の利益を喪失していないと誤信した場合は、期限の利益の喪失は信義則に反し許されないとするものです。
すると、アイフルが、返済日に遅れた以降の返済について全て「遅延損害金」として収受した旨の領収書を発行しておらず、「利息」として収受した旨の領収書を発行していたとすれば、このアイフルの行為によって消費者は期限の利益を喪失していないと誤信してしまいます。
上記最高裁判例に照らせば、アイフルの期限の利益の喪失の主張は、信義則に反し許されないと言えるのではないでしょうか。
2014.3.5